膠原病とは

病理組織学的に、結合組織全般にフィブリノイド壊死の病変がみられる疾患のことをいいます。

古典的膠原病には6疾患あり全身性エリテマトーデス・強皮症・多発性筋炎/皮膚筋炎・結節性多発動脈炎・リウマチ熱・関節リウマチがあります。

現在ではこれらの疾患に加えて、シェーグレン症候群、混合性結合組織病(MCTD)、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎、好酸球性筋膜炎、成人スティル病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ベーチェット病、サルコイドーシスなども膠原病関連疾患に含まれます。

血液検査で、自分自身の体の構成成分と反応してしまうリンパ球(自己反応性リンパ球)や抗体(自己抗体)が見つかり、このことが膠原病という病気を引き起こす原因になっていると考えられます。
このために膠原病は「自己免疫疾患」とも呼ばれます。

したがって、膠原病の治療には病気を引き起こすリンパ球の働きを抑えたり、自己抗体が作られるのを抑えるために、副腎皮質ホルモン(ステロイド)や免疫抑制薬が用いられます。

膠原病は、原因が不明で治療法のない「難病」というイメージが強くもたれていましたが、日本では膠原病とその関連疾患の多くは厚生労働省によって特定疾患(いわゆる「難病」)に指定され、公費補助対象疾患とされています。

疾患

全身性エリテマトーデス

日本で約3万人の患者さんがいると考えられており、20~40歳代の女性に多く認められますが、どの年齢にも生じます。男女比は1:9と女性に多い病気です。

全身症状(発熱、全身倦怠感、体重減少)
関節症状(関節の痛み・腫れ)
皮膚粘膜症状(蝶形紅斑、日光過敏、口腔内の無痛性潰瘍、レイノー症状)
胸膜炎・心膜炎
腎炎(蛋白尿や血尿)
中枢神経症状(意識低下、幻覚、痙攣)
血液障害(貧血、血小板減少、白血球減少)

など様々な臓器に障害が生じうる病気です。

どのような症状が出るかは個人差があり、検査によりはじめて診断される場合もあります。 

治療の基本はステロイドですが、その必要性や量は、病気の程度と合併症の有無で決まります。

ステロイドの効果が不十分な場合や、副作用で十分使用できない場合は、免疫抑制薬を併用することもありますが、病気が改善すれば徐々に減量していきます。

強皮症

レイノー症状
皮膚硬化
内臓病変(肺、食道、腎臓、心臓などの線維化と血管病変)

が特徴とする病気です。

30~50歳代の女性に多く認められますが、病気の原因は不明です。

血液検査で抗核抗体、抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNP抗体などが検出されることがあり、自己免疫が発症に関係すると考えられています。

内臓病変のチェックのために、食道造影、胃内視鏡、胸部レントゲン・CT、呼吸機能、気管支鏡、心臓超音波などを併用して評価します。 

治療は症状に応じて行います。

皮膚硬化には少量ステロイド(効果的な治療法はないが効果があることもある)
血管病変には血管拡張薬
内臓病変(肺、食道、腎臓、心臓などの線維化)

にはプロトンポンプ阻害剤、消化管運動促進剤、ステロイド、免疫抑制剤、ACE阻害剤、その他などが行われますが、病変が進行しないうちに診断、治療することが大切です。

多発性筋炎/皮膚筋炎

横紋筋(体を動かすのに使う筋肉)に炎症が起き、皮膚症状のない多発性筋炎と皮膚症状のある皮膚筋炎に分かれます。

筋炎は原因不明で、病気が発症する年齢は小児から高齢者まで幅広いのですが、男女比は1:2と女性に多い病気です。 

筋炎の症状として自覚的に気づく症状としては車の乗り降りが難しい、椅子から立ち上がりにくい、腕をもちあげるのがつらい、枕から頭をもちあげるのがつらい、階段の登りがつらいという事があります。

筋痛には自発痛以外に、把握痛といって筋肉をつかむと痛くなる事もあります。

その他に発熱、関節痛、全身倦怠感見られる事もあります。

皮膚症状では、ヘリオトロープ疹(上まぶたが紫紅色に腫れる)、ゴットロン徴候(指関節の背面が赤く固くなる)があります。

皮膚症状が筋炎症状よりも先に出現する事もあるので、皮疹から皮膚筋炎が疑われる事もあります。

筋炎に合併する間質性肺炎がありますが、これも筋炎症状より先に出現する事があります。

筋炎がほとんど認められない皮膚筋炎は、命にかかわる重症な間質性肺炎を伴う事があるので注意が必要です。

また、皮膚筋炎には悪性腫瘍の合併が高いため、診断に至る過程で疑わしい場合は全身精査が必要なことがあります。

悪性腫瘍が発見された場合は、その治療を優先することで筋炎が改善する場合があります。

改善がみられない場合には、筋炎に対する治療を行います。 

血液検査で、筋酵素のCPKやアルドラーゼが上昇したり、CRPや血沈のような炎症反応が上昇します。

自己抗体では抗Jo-1抗体が陽性になる事があります。

確定診断のために筋電図や筋生検を行います。

筋肉の炎症活動性を評価するためにMRIを用いることもあります。 

治療はまず入院による安静の下、ステロイドを使用します。

病気の改善に合わせて量を減量していきます。

ステロイドの効果が不十分な場合には免疫抑制薬を併用する事もあります。ほとんどの方は治療により以前のような運動能力に回復して生命予後も良好ですが、治療が遅れると予後が悪くなるので心当たりがある場合は専門外来に早めに受診することが大切です。

結節性多発動脈炎

60歳以上の男性にやや多く認められ、全身の動脈の太さが中くらいから細いレベルに炎症が起きる病気です。

動脈の炎症が主にどこかによってさらに病名が分けられています。
病変の主体によって、

古典的多発動脈炎(中~小動脈炎主体)
顕微鏡的多発血管炎(細動脈炎主体)

に分けけられます。 

病気全体として主に高熱、体重減少、関節痛、筋肉痛、貧血が認められます。

動脈炎により、紫斑、皮膚潰瘍、腎機能障害、高血圧、心筋梗塞、消化管障害(腹痛、下血)、肺出血、間質性肺炎、脳出血、脳梗塞のような多彩な症状を認めるため、血管造影による診断評価を行います。

急速に進行する腎炎を合併することがあるため、腎生検による確定診断を行います。

また、左右非対称に手足のしびれ、感覚・運動障害を認める多発性単神経炎を伴う場合があります。 

治療は高用量のステロイド免疫抑制薬を併用します。

リウマチ熱

レンサ球菌咽頭炎が治まった数週間後に関節痛、発熱、心臓の炎症により生じる胸痛や動悸(どうき)、不随意運動、発疹、皮下の小結節などが出現します。

関節痛は平均2~4週間続きますが、長期的な関節の損傷は起こりません。

心臓の炎症は平均5カ月以内で徐々に消えます。

リウマチ熱にかかった人の大半は回復しますが、少数の人では心臓の弁に永久的な損傷が残ることがあります。

中年期になると、弁の損傷が心不全や不整脈の1種である心房細動を引き起こすことがあります。

治療はリウマチ熱を予防するためにレンサ球菌による感染症を抗菌薬で迅速かつ完全に治療することです。

過去にリウマチ熱を経験している子供の場合は、もう一度レンサ球菌感染症にかかるのを予防するために、ペニシリンを経口で毎日投与するか、または筋肉注射で毎月投与します。

この予防的治療は成人するまで継続する必要があります。

不明熱

3週間以上継続する38.3度以上の発熱が3回以上認められ、1週間の入院精査にも関わらず診断の確定しないものをいいます。

診断が確定しないまま症状が改善してしまう場合と、経過観察の過程で膠原病や他の病気がみつかる場合があるので、気になる際は病院受診することが大切です。